~南寧~
成都からチベットに行けなかったので、この先は南下して東南アジアを回りながらバンコクの友人を訪ねる事が、とりあえずの目標となる。
そこで中国からベトナムに抜けるのに一番近そうな南寧まで一気に南下する事にした。
成都東駅から寝台列車の硬臥、3段ベットの一番上を向かい合わせに陣取り、南寧まで中国最後の列車旅はなんと32時間半!!夜出発した列車は翌日一日中走り続け、3日目の早朝に南寧に到着。
この時乗った列車は、意外と新しく綺麗で快適だった。
私はベッドで本など読みながらウトウトし、たまに通路で体操などして、車窓を見ながらカップ麺やおやつを食べ、なぜか夜もぐっすり。逆に哲郎氏は移動中の睡眠がとれないタイプで、南寧に着いた時にはふらふら。到着した日は体力を戻すのに半日お昼寝となった。
南寧は気温も湿度も高く、夕方にはスコールのような雨も降り、まるで東南アジアのよう。そもそも中国なんて今ではあの大きな国土全部を中国と呼んでいるけれど、元は色々な民族の集まりで、南寧くらい南に下れば、ベトナムやタイの人のように肌の色も浅黒く小柄な東南アジア系の人も多い。
街は大きな都市だけれど、ビルというより雑多とした軒の低い小さな店がひしめく商店街が多く、夜には洋服から日用品、電化製品にガラクタまで何でも並ぶナイトマーケットが盛況。食べ物も南国風のスイーツや果物、安くてボリュームのある丼モノ屋台も多くて楽しみいっぱいのはずが、哲郎氏がダウンするという緊急事態で、残念な街になってしまった。
事の始まりは到着した翌日。中国最後の都市を楽しむべく、食べ物屋台街やらガラクタの並んだ市場やらを眺めながら歩いていると、哲郎氏の体に蕁麻疹のような赤い発疹が出てきた。
はじめは長時間列車で移動した疲れと、南寧の暑さで体が参っているのかな?などと言いながら、ホステルで休みつつ様子を見る。だがその夜には体が痒くて眠れないと言い、翌日薬局でアレルギー用のかゆみ止めを購入。それでもあまり効果がなく、食事やちょこっと街歩きはするけれど、すぐホステルに戻って休憩という日々。原因がわからないまま3日過ごし、翌朝にはベトナム行きのバスに乗るという夜中、とうとう原因が判明。
この旅初のベッドバグ(南京虫)の襲撃だった。
哲郎氏は昔オーストラリアで経験していて、刺されると蕁麻疹のように赤くぷっくり腫れ、気が狂いそうなくらい痒くなる。旅に出る前から、その怖さを話してくれていたが、日本では絶滅しているらしく私は見た事が無かった。そして、どうやら刺された時の症状は個人差があるようで、同室なのに私は無害。
刺されていないと思っていたが、実は蚊に刺されたと思っていたのがベッドバグだったかもしれない。。。という程度。この体質はラッキーで、この先の旅の最強の武器となったのは言うまでもない。
逆に哲郎氏は悲惨である。夜中にヤツらを発見した時から一睡もせず、出てくるヤツらを潰しまくっていたらしい。思い返せばシーツやベッド脇の壁に小さな赤い染みがあったのも納得。これまでにもヤツらを潰した人がいたのだろう。この経験から、東南アジアやインドでは部屋選びの際に壁やシーツをチェックする事を学んだ。それでも避けきれず、何度か襲撃にあってしまったが。
こうして南寧ではボチボチ街歩きをし、マーケットでこの先必要な物を探したり、屋台飯や南国スイーツを試したりしたのみで、中国最後の街としては少々残念な日々となった。