~ホワイトレイクツアー5日目~
この日は「ホースフェスティバル」なるものがあるとの事で、珍しく前日から7時には出発!という指令が出ていた。
毎日夜更かしで酒盛りして、朝はゆっくりスタートしていたメンバー全員、この日は頑張って早起きし、見事7時には準備完了!
最初に訪れたのはカラコラム。
ここはモンゴルでは珍しくチンギスハーンが兵站基地を造営し、2代大ハーンが宮殿、城壁を築いてモンゴル帝国の首都を定めたところ。居住跡や城を残さない文化であったモンゴルにおいては大変珍しい、大きな遺跡群である。
とはいえ、今でこそネットを駆使して調べたので知ったような説明を書いているが、到着した時はいつも通り特に説明もなく、エギーは出口で待っているとの事だったので、よくわからないままその広い敷地をウロウロする。
その遺跡内には後にチベタン仏教の寺院として立派に建て直され、今も使われている建物もある。だが私達の心を揺さぶったのは、それよりもかつてのモンゴル帝国の初代皇帝がいたと思われる、巨大なゲルの跡。
「ゲルの跡」と言ってもそれは一見ただの原っぱに、ゲルの柱の台座だったらしい石が点々と残っているだけなのだが。。。ユーラシア大陸の広大な地域を征服した偉大な皇帝が、大きさこそ違えど遊牧民と変わらないゲルに住んでいたのかと想像すると、モンゴルの民族の生き様を見たような気がしてゾクゾクしたのだった。
その後は長いドライブをしてミニゴビと呼ばれる小さな砂漠を目指す。
今までになくゲルが並ぶ集落が点々と数カ所見えてきて、そこは観光地の宿街であると判明。その一番奥が今夜の私達の宿泊場所だった。
ここでは珍しく団体ツアーに良くある、ホースライディングとキャメルライディング体験というのがセットになっているらしいのだが、この後の予定、「ホースフェスティバル」が待っているので慌ただしく一つのみ終わらせ、残りは夕飯前というやっつけ仕事となり、昼食をとったらとにかく祭りへ急ぐ事に。
さて、出発だ!と思ったら、この宿の家族やら近所のおばちゃんやらが車に乗り込んできて、普段6人で座っている後部座席に10人詰めで走り出す。
ガタガタ道をぎゅうぎゅう詰めでぶっ飛ばすのはさすがに体に堪え、ツアーメンバーは若干殺気立っていたが、乗り込んだ子連れのおばちゃんなどは、余程楽しみにしているのだろう、綺麗な民族衣装を着て何とも楽しげだから文句の言いようもなく、お尻も足も痺れて限界だったがひたすら我慢。
ようやく到着した会場では、地元の小さなお祭りを想像していた私達の予想に反して、実に盛大なお祭りが催されていた。
メインの会場は毎日目にしているだだっ広い草原なのだが、ツアーに出てからは見た事もないくらい車や人が集まっている。また横には小高い丘があり、その丘の上にはまるで人工的に積まれたような不思議な岩山があって、そこにはしめ縄のようにロープが張られていて青い布切れが無数に巻き付けられている。詳細はわからなかったが、何か信仰を意味するのは確かだろう。
さてこのお祭りのメインは、子ども達のホースレース。「子ども達」と言っても侮るなかれ。わずか10歳にも満たないような子ども達が裸馬同然の薄っぺらい鞍を乗せた馬に跨り、熾烈な戦いを繰り広げる。
会場はスタートとゴールのみで、途中はこの広い草原を疾走してくるようだが、ゴール間際まで僅差で激しい優勝争いがあったり、ゴール後に悔しくて泣いている子。父親から励まされている子など皆立派なアスリートである。
観衆も大いに湧いて、大変見応えのあるレースだった。
レースがスタートして戻って来るまでの間には、モンゴル相撲の勝ち残り戦や、ヤギだか羊のミルクで出来たヨーグルトのような物の無料配布など色々と余興がある。
モンゴル相撲を見ている時には、人垣が凄くてモンゴルでは珍しく人がぎゅうぎゅう。前の女の子が私の足を踏んでしまい、後からはにかみながらチョコレートを差し出してきてくれたり、隣の人が「見えるかい?」という感じで気遣ってくれたりとほっこりする場面もあった。
また女性達の綺麗な衣装もさることながら、男性達のデールというコートのようなオーバーのような物に帯を締めた姿がとにかく印象的で、デールに革のブーツを履いて馬に跨っていたりすると、どんな人でもカッコ良く見えてしまう。
そんなこんなで盛り沢山の一日も終わり、疲労困憊ながら充実したこのツアー最後の夜を惜しむように、皆で笑い語らい夜更けまで過ごしたのだった。