~ワットプー~
パークセーはサワンナケートと並ぶくらいの町だということで、そこそこ栄えている。また私達も唯一の目的としていた世界遺産ワットプーへの拠点となっており、観光客向けの店もチラホラ。その分少々物価や食べ物は高い気がしたが、居心地の良い環境だったので特に気にならず、ゆっくりくつろげる町だった。
ちなみにタイにある有名な寺院、ワットポーと勘違いされそうだが、正式名称「プラーサート・ワット・プー」は別物である事を先にお知らせしておく。
まずはその唯一の目的、ワットプーを目指す。
ここでいきなり目指すと言っても、ろくに下調べをしていないので、ひとまずリサーチから始まる。
ツアー会社や大きなホテルで聞いてみた結果、車をチャーターして行くツアーは一人50~60USD。一方レンタルバイクを借りて自力で行けば、二人で10USDもかからない。ツアー会社の人も私達のようなバックパッカーには高いツアーを勧めるでもなく、「レンタルバイク屋ならそこら辺にいくらでもあるよ」と教えてくれるからとてもありがたい。
しかしこの時期ちょうど雨季のラオス。
ワットプーにいざ出発と思っていた日は朝から雨。昼頃やっとやんだのでバイク屋さんに行ってみると、半日分の30000キープ(300円)で良いと言ってくれる。なんと親切な!
というわけで出発が昼になったがワットプーまで50kmのツーリング。
世界遺産までの道のりとあって、さすがにきれいな道で走りやすい。途中はのどかな風景と、掘っ建て小屋のような小さな雑貨屋がたまに出てくるだけで他は何もない。ツーリングには最高である!
ワットプーとはもとはクメール人によって建てられたヒンドゥー寺院の遺跡群で、神殿はアンコールワットの原型と言われているらしい。現在残っている建物は11世紀頃に建てられたものだそうである。
もちろんいつも通り、行った時にはこんな事は何も知らなかったが。。。
爽快ツーリングで到着したワットプー。
駐車場からメインの遺跡が見えてくるまで歩く事10分。「あーなんだかアンコールワットの写真とかにありそうな、見た事ある感じだ~」と思ったのは初めだけ。
メインの遺跡を歩き回ってみるとさらに奥に向かって道と階段が続いており、それに従って進んでいくと遺跡を眺められる広場に到着。その眺めがなんとも良い!
さらに木の茂みの中に続く狭い階段を上っていくと、先には木の隙間から光が差し込み、何やら神々しい光を垣間見る。
上りきる前からすでに鳥肌が立ちそうな、神様に近づいているような雰囲気を感じ、息を整えながらゆっくりゆっくり進んでいくと、その先には山の岩肌と遺跡の中に佇む神や仏の姿。
もとはヒンドゥー教の寺院だったのでレリーフやヒンドゥーの神々が残っているのだが、後に上座部仏教の聖地となり、今でも現地の仏教徒の人々が通う信仰の場となっていて、仏像もいらっしゃる。そもそも仏教とヒンドゥー教は密接な関係があるので、共存していてもさほど不思議はないようだが、ここでは特に全てが大切にされている様子が伺える。
長い階段を上りきった一番奥の仏像に、綺麗なお供えや線香、ロウソクの火が絶えずにある様子が、ラオスの人々の信仰のあり方を表しており、この国で私達が感じる居心地の良さの根源を見たような気がした。
この何とも神聖で清々しい空間は、信仰心の薄い私達の心まで綺麗にしてくれるようで、とにかく本当に居心地が良い。
初めの神々しさに緊張するような感覚が過ぎると、自然にフーっと悪いものを吐き出して笑顔になれるような安らぎを感じ、いつまでもその穏やかな空気の中に居たいと思ってしまうような空間。
中国で見た千手観音以来の感覚。これが信仰というものなのだろう。
何かに守られているようなこの安らぎをゆっくり堪能し、気付けば閉園時間。
名残惜しいが日が暮れても困るので、仕方なくワットプーを後にしたのだった。